「懐石料理」と「会席料理」…2つの違いは何?実はまったく意味が違うんです!
突然ですが!
皆さまは「かいせきりょうり」と聞いてどちらを思い浮かべますか?
- ◆懐石料理
- ◆会席料理
読み方は同じなのに漢字はまるで違いますね。
とはいえこの2つ、読み方が同じでも意味は大きく異なるのです。
今回は、混同されやすい「懐石料理」と「会席料理」の違いについてお話していきたいと思います。
ルーツは本膳料理
日本料理は、
伝統的な「本膳料理」、
茶席で供される「懐石料理」、
お酒の席で供される「会席料理」の3つに分けられます。
しかし元をたどれば、懐石料理も会席料理も、ルーツは同じ本膳料理です。
本膳とは、日本で最も格式の高いおもてなし料理です。
それぞれ決められた数の料理で構成され、
本膳(一の膳)、二の膳、三の膳、与の膳、五の膳といった複数の膳で成り立っています。
それまでのただ「食事を取る」という行為そのものに、儀式的な意味合いを持たせ形式的にしたものです。
古くは室町時代、武家の礼法から食事の礼儀作法も厳しく決められました。
この時代にできた形式が本膳料理の発祥と言われています。
しかし、江戸時代にかけ発展してきた本膳料理も、明治以降の洋式化に伴って主流ではなくなり、現在ではこの時代の面影を残す儀式的な料理は、冠婚葬祭などの一部にしか見られなくなってしまいました。
本膳料理をルーツに持つ「懐石料理」と「会席料理」。
これらに共通するのは複数の膳からなる格式の高い日本料理ということになります。
それでは、この2つの違いを見ていきましょう。
茶会の席で供される「懐石料理」
安土桃山時代、かの茶人・千利休によって茶の湯が完成されました。
懐石料理は茶の湯において、濃茶(こいちゃ)をすすめる前に出す料理です。
古くは茶の湯の主催者が、自ら作りもてなすものでした。
茶道の侘び寂びを表現し、
少量で旬のものを素材を活かしてもてなすことが基本にあります。
ちなみに「懐石」という言葉には料理の意味も含まれているため、
「懐石料理」とするのは間違いという指摘もあります。
また、会席料理との混同を避けるために「茶懐石」とも呼ばれる場合もあります。
もともと「懐石」は、禅の言葉です。
寒い時期に空腹をしのぐため、軽石を火で熱し懐に入れ体を温めるという意味の
「温石(おんじゃく)」という言葉に由来します。
茶会の席で空腹のまま刺激の強い濃い茶を飲むことを避けるための食事で、
いわば茶を味わう上で差し支えない程度の軽食を指します。
茶会の席で出される一汁三菜を基本とした懐石ですが、流派によって違いはあります。
現代は、飯、汁物、向付(むこうづけ)の後、
煮物、焼き物、預け鉢、吸い物、八寸(はっすん)、
湯桶、香の物、菓子の順に、ひと皿ずつ出されるのが一般的です。
この後お話する会席料理との大きな違いは、懐石は飯と汁が先に供されます。
酒を楽しむ「会席料理」
一方、「会席料理」とは料亭や旅館、宴席などで供され、
酒宴の席における上等なおもてなし料理のことを指します。
現在の日本料理の主流となるのがこちらですね。
もともと会席は、歌や俳諧の席のことでした。
会席では俳人のための料理が出されていました。
江戸時代以降、会席が料理茶屋で行われるようになると、
懐石料理の作法にアレンジを加え、会席料理として提供され始めたのです。
会席料理は酒を楽しむための酒菜で構成されています。
前菜、吸い物、刺し身、焼き物、煮物、蒸し物、酢の物などを含む一汁三菜を基本に、
お通し、揚げ物、蒸し物、和え物、酢の物などの肴(さかな)が加わり、
最後に飯と汁、香物、水菓子が出されます。
お酒を楽しむ食事であることから、飯や汁などは最後に出されます。
現代では同様の意味にも使われ、違いは曖昧
時代ともに洋風化がすすみ、かつての複雑な本膳料理は徐々に簡略化の道をたどります。
そこで登場したのが「懐石料理」「会席料理」です。
読み方は同じでも大きく意味の異なる「懐石料理」と「会席料理」。
現代では同様の意味を指す場合も多く、本来の意味とは裏腹に極めて曖昧です。
いかがでしたか?
今までさほど気にも留めなかったことでも
実は大きな違いや意味があることを知ることで、
日本料理をより一層楽しむことができるのではないでしょうか。